Research theme
現代国際政治と米中露関係に関連する様々なテーマを扱います。 今年度は 「ウクライナ、イスラエル、台湾をめぐる安全保障とアメリカ」を取り上げますが、ゼミ生の関心を踏まえて、その他の内容も取り上げます。
「現代国際政治のゼミ(研究会)というのは、いったい何を扱うのだろうか。」 「現代国際政治」という言葉を目にしたときに、おそらく多くの人はこのような疑問を抱くだろうと思います。当ゼミでは、今日の大国間政治や安全保障をめぐる諸問題を研究テーマとして扱います。
2024年度のゼミで扱う全体テーマは、「ウクライナ、イスラエル、台湾をめぐる安全保障とアメリカ」とします。2014年春から始まり、2022年2月に本格化したロシアによるウクライナ侵攻は停戦の兆しが見えず、また2023年10月7日のハマスによるイスラエル襲撃を契機として勃発した中東における紛争も収束する気配を見せていません。東アジアで武力紛争は勃発していませんが、中国は台湾に対して多面的な威圧行動を重ね、南シナ海や東シナ海でも現状変更行動を続けているほか、中露が連携しながら示威行動をとり、北朝鮮も軍備増強に引き続き邁進しているため、平穏とは言い難い状況が続いています。アメリカは、欧州、中東、アジアの安全保障問題に同時対処する必要に迫られており、そうした中、2024年11月にはアメリカ大統領選が行われ、もし政治指導者が交代すれば、様々な不確実性が高まると言われています。武力紛争を収束させる上で重要な条件とは何か、いかなる条件が揃えば戦争の勃発を防ぐことができるのか、そしてこれらの条件を満たす上で、アメリカはどのような役割を果たしうるのか、アメリカの取り組みに限界や制約があるとすれば、他の同盟国や同志国はどのような役割を果たし、いかなる負担を請け負う必要があるのか、アメリカ大統領選の結果は、今後の安全保障や国際秩序にどのような影響をもたらすのか。
当研究会では、国際政治の最前線について学んでもらいながら、古典と歴史を読んで旧くて新しい国際政治の問題が現在どのように顕れているのかを見抜いたり、理論を学んで複雑な事象の中に潜む本質的な問題とは何かを見極めたりする力を養ってもらいます。春学期は、戦略論や安全保障に関する文献を輪読しながら基礎概念を学びます。秋学期は、ヨーロッパ、中東、アジアの安全保障に関する最新の論文を読みながら、専門的な知識を身に付けてもらいます。ゼミでは、ゼミ生が文献の要点を解説し、その内容を踏まえてゼミ生全員で考えて問いを立て、その問いに対する自分の考えをまとめ、ゼミで意見を持ち寄って議論し、講評・解説を聞く、というプロセスを繰り返します。この作業を通じて問うことを学び、学んだことを問うてもらいます。
というわけで、当ゼミでは、大国間政治の最先端のテーマを題材に、調査・研究に取り組んでもらいますが、その目的は、学問を楽しみながら、社会人に必要な問題解決能力を高めてもらうことにあります。国際政治の最前線を冷静に見ながら、1年間かけて皆さんと様々な「問い」について、議論しながらその答えを考えます。根拠のない単なる思い付きで議論するのではなく、様々な文献を読んで基礎知識と専門知識を身に付けながら、国際関係の構造とプロセス、そして文脈を見極める力を身につけ、「問いを立てる力」、「論理的に考える力」、「多角的・複眼的にものをみる力」、ひいては「試行錯誤しながら自分で答えを導く力」を養って欲しいと考えています。また、「第三者に分かってもらえるように話す力」なども身に着けてもらいます。
また、社会人になってからも活きるような、物事の原因や問題のありかを突き止めて、それに対処するために何をすべきかを判断し、行動を起こすのに必要な「実践する力」も身につけてもらえればと思います。私がかつて国家公務員として外務省で実務を手掛けていたこともあり、学問を通じて深く思考することはもちろん、実践も重視したいと考えています。こうした観点から、現実世界との接点を持つために、外交・防衛・報道など各種業界の実務家を招いて懇談会を開いたり、他大学との合同ゼミを開催して大型の外交シミュレーションを実施したり、状況が許せば、調査・考察の結果を海外の現場で確かめる海外自主調査旅行にも出かけ、学外で刺激を受けて視野を広げる機会も設ける予定です。社会人になるにあたって身につけるべき基本的なマナーや心がけなども日頃から指摘します。
当研究会は2022年度に新設され、毎年ゼミ生を募集します。留学先から帰国する予定の学生も、これから留学する予定の学生の応募も受け付けます。ゼミの仲間たちと楽しみながら自分を鍛えたい、和気あいあいとしながらも真剣に学問に取り組みたいという意欲ある学生諸君を歓迎します。国際政治の専門知識は問いません。卒業する時に、「大学在学中に、その当時の最先端をいく国際政治のテーマについて学び、同世代の誰にも負けないほど調べて考えて議論した」と自負できるようになりたいと思う人にぜひ応募してもらいたいと思います。
毎週のゼミでは、国際政治の最新の動向に関する論文・論考を取り上げ(英語文献あり)、その内容について議論を重ねます。春期中のゼミでは、はじめにレジュメとパワーポイントに基づいたプレゼンテーションを行い、次週までの課題について検討し、翌週に前週に定めた課題について議論し総括するというサイクルを繰り返して、力を身につけていきます。発表を踏まえて自分たちで何を問うべきか検討し、翌週までの課題(問い)を自分たちで立て、1週間かけてじっくり考えてそれをまとめ、翌週のゼミで考えを持ち寄って議論してもらうという方式です。並行して、チーム別に担当テーマについてケーススタディの調査を実施してもらい、調査結果をまとめ、夏合宿で発表してもらいます。(ゼミで講読する文献は、ケーススタディに関連するものとします。)
秋学期には、学期末に提出する短い共通課題のゼミペーパーを執筆する作業を通じて、文献調査、思考や論文の書き方などの基本的な作法を身に付けてもらいます。4年生になった際には、自分で自由に選ぶ現代国際政治に関するテーマについて、年度末までに研究論文を執筆しますので、あらゆるテーマに自由に取り組むことが出来ます。
年間行事としては、夏合宿、他大学との合同ゼミ、有志学生による海外自主調査旅行などを予定しています。合同ゼミでは、外交シミュレーションを実施して、日頃から鍛錬した力を実践・発揮する場も用意します。2023年7月には、九州大学のゼミと合同で台湾有事シミュレーションを実施しました。ゼミは、来年度も火曜日4・5限に実施する予定です。
夏合宿、合同ゼミ、海外自主研修旅行について
森聡研究会では普段のゼミ活動以外にも、実践的な学びを得られる機会がたくさんあります。一例として、2023年度の実践的活動をご紹介します。
4月には、以前外務省で外交官としてご活躍されていた森先生のご紹介で外務省を訪問しました。北米局日米安全保障条約課の前田修司課長より、日本を取り巻く安全保障環境と日米安保体制に関するお話を伺いました。その後、ゼミ生からの数多くの質問に対して大変ご丁寧にお答え頂き、ゼミ生一同多くのことを学ばせて頂きました。
6月には、九州大学の中島ゼミと合同ゼミを行いました。合同ゼミでは、台湾有事を想定した外交シミュレーションを慶應生と九州大生が混同したチームで行い、新鮮な学びを得ることができました。合同ゼミ後は懇親会が開催され、それぞれ親睦を深めました。
8月には神奈川県の葉山で2泊3日のゼミ合宿を行いました。ウクライナを舞台にした外交シミュレーションをはじめ、ディプロマシーゲームという外交をテーマにしたボードゲームをゼミ生一同でプレーしたり、BBQなどを楽しんだりしました。
10月にはアメリカ海軍関係者の方と、台湾有事の際のアメリカと日本の対応について英語で議論する機会がありました。
このように、森ゼミでは国際政治の最前線でご活躍されている方のお話を直接聞けたり、議論ができたりするなど、実践的な学びを深めることができます。
森聡研究会ではゼミ生と相談した上で、夏合宿、他大学との合同ゼミ、海外自主旅行研修を予定しています。森先生が法政大学でご担当されていたゼミでも合宿などを行っていました。