文責:古谷

アハティサーリ氏はまずご講演の始めに、「最近の研究において、和平調停のプロセスの中で、実効的な調停を行っていけば和平合意に至る確率は飛躍的に高まることがわかっている」と述べていました。そして、和平調停におけるNGOの立場と役割を強く説いていました。そして、最後に「平和というのは意志・意図の問題である。」と、締めくくられました。

 

要旨

国家が単独で和平調停をすすめようとしていたが、国際的環境が複雑であったため、和平合意には至ることができなかった。しかし、近年の国際関係の変化によって、紛争解決・和平調停に携わるアクターの数と種類に大きな影響を与え、役割を担う新しいアクター、NGOが増えていった。非政府アクターは、政府がかかわることができない第三者的な役割を果たすことができ、また、政府にとって良きパートナーにもなることができる。

逆に、地域機関・支援している国の政府からの協力も不可欠である。NGOにも限界があり、調停のプロセスの上で人脈のネットワークは重要なものとなる。

また、アハティサーリ氏の考えとして、問題に対する立場と当事者とかかわっていく立場は区別してもよい、とあった。NGOが調停のプロセスの上で、完全な中立な立場をとるということは必ずしも有効なものではない。問題に対する立場と当事者とかかわっていく立場のどちらかに傾斜しないということが大切である。

 

和平合意の調印が終わりでなく、始まりなのである。調停和平はすべての問題を解決するわけではない。それらは民主的な制度を構築する枠組みをつくると本質的な要素に触れるものである。枠組みをつくることによって当事者は引き続き協力し、持続可能な和平の道を歩む。そして、決意があれば紛争は解決する。

 

 

感想

 まず、アハティサーリ氏が、ご講演の最初に「私は意識的に和平調停という職業を選択したわけではない。はじめは教育の分野を勉強していた。でも、そこで培ったものが調停の交渉で役に立っている。」とおっしゃっていたことが印象に残っています。自分が磨いてきたものが将来役に立つ時が来ることはあるのだなと、学生として考えさせられました。

 

また、調停によって紛争は和平に進む可能性が高く、中立的な立場で交渉に当たるNGOの役割が重要になっていると、同氏は強調していました。この言葉は、紛争問題に対してだけではなくNGOの役割が今後、様々な問題に対して重要になってくると考えるきっかけとなりました。