Research theme

現代国際政治と米中露関係に関連する様々なテーマを扱います。
今年度は 「世界におけるアメリカの戦略的役割の変容と国際紛争のゆくえ」を取り上げますが、ゼミ生の関心を踏まえて、その他の内容も取り上げます。
「現代国際政治のゼミというのは、いったい何を扱うのだろうか。」
「現代国際政治」という⾔葉を⽬にしたときに、おそらく多くの⼈はこのような疑問を抱くだろうと思いますが、今⽇の⼤国間関係や国際安全保障、国際経済関係、国際政治秩序をめぐる諸問題というイメージでとらえてもらえればと思います。例えば 2024 年度は、「ウクライナ、イスラエル、台湾の安全保障とアメリカ」というテーマでゼミを実施しています。春学期は、国際標準の国際政治学のテキストや古典などを輪読して基礎知識を⾝につけ、秋学期は国際安全保障、国際経済関係、国際政治秩序などに関するグループによる調査・研究を実施し、コンペ⽅式で⼆つの班同⼠がプレゼンテーションを発表する形式で、発展的なテーマに関する理解を深めます。
ゼミ⽣が⽂献の要点を解説し、その内容を踏まえてゼミ⽣全員で考えて問いを⽴て、その問いに対する⾃分の考えをまとめ、ゼミで意⾒を持ち寄って議論し、講評・解説を聞く、というプロセスを繰り返します。春学期は指定⽂献ごとにこの作業を⾏います。秋学期は、⼤きなテーマといくつかのキーワードを設定して問いを⽴て、それらの問いに関して複数の⽂献やデータベースなどをチームごとに調査し分析して、問うことを学び、学んだことを問うてもらいます。
というわけで、当ゼミでは、⼤国間の国際政治や地域紛争、国際秩序にまつわる最先端のテーマを題材に、調査・研究に取り組んでもらいますが、その⽬的は、学問を楽しみながら、社会⼈に必要な問題解決能⼒を⾼めてもらうことにあります。国際政治の最前線を冷静に⾒ながら、1 年間かけて皆さんと様々な「問い」について、議論しながらその答えを考えます。根拠のない単なる思い付きで議論するのではなく、様々な⽂献を読んで基礎知識と専⾨知識を⾝に付けながら、国際関係の構造とプロセス、そして⽂脈を理解する⼒を⾝につけ、「問いを⽴てる⼒」、「論理的に考える⼒」、「多⾓的・複眼的にものをみる⼒」、ひいては「試⾏錯誤しながら⾃分で答えを導く⼒」を養って欲しいと考えてゼミを設計しています。また、単に⽂献の要旨を発表するのではなく、問いや課題を軸にしたプレゼンテーションを通じて、「第三者に分かってもらえるように話す⼒」も⾝に着けてもらいます。
また、社会⼈になってからも活きるような、物事の原因や問題のありかを突き⽌めて、それに対処するために何をすべきかを判断し、⾏動を起こすのに必要な「実践する⼒」も⾝につけてもらえればと思います。私がかつて国家公務員として外務省で実務を⼿掛けていたこともあり、学問を通じて深く思考することはもちろん、実践も重視したいと考えています。こうした観点から、現実世界との接点を持つために、外交・防衛・報道など各種業界の実務家を招いて懇談会を開いたり、他⼤学との合同ゼミを開催して⼤型の外交シミュレーションを実施したり、状況が許せば、調査・考察の結果を海外の現場で確かめる海外⾃主調査旅⾏(有志による任意参加)にも出かけ、学外でも刺激を受けて視野を広げる機会も設ける予定です。社会⼈になるにあたって⾝につけるべき基本的なマナーや⼼がけなども⽇頃から指摘します。
2025 年度のゼミで扱う全体テーマは、「世界におけるアメリカの戦略的役割の変容と国際紛争のゆくえ」とする予定ですが、最終的には 2025 年度のゼミ⽣と相談して決めます。春学期は、国際政治学や安全保障論に関する基礎概念をテキストや古典を講読して学びます。秋学期は、アメリカの政治・防衛・外交や、ヨーロッパや東アジアの国々の外交、先端技術やサプライチェーン、政治体制の異なる国々の間の競争と協調などに関する最新の論⽂を読みながら、専⾨的な知識を⾝に付けてもらいます。アメリカが世界で果たしてきた抑⽌、貿易⾃由化、リベラルな価値の推進といった伝統的な役割に変化が⽣じつつありますが、それは同盟国にとって何を意味するのか、国際経済関係のどのような影響をもたらすのか、そして市場経済型⺠主主義モデルと国家資本主義型権威主義モデルの競争が新興国・途上国(グローバルサウス諸国)に何をもたらすのかを問い、世界におけるアメリカの役割の変化が、今後の国際秩序にどのような影響を及ぼしうるのかを考察してもらいます。国際政治の最前線について学んでもらいながら、古典と歴史を読んで旧くて新しい国際政治の問題が現在どのような形で現れているのかを⾒抜いたり、理論を学んで複雑な事象の中に潜む本質的な問題とは何かを⾒極めたりする⼒を養ってもらいます。
当研究会は 2022 年度に新設され、今回第 4 期⽣を募集します。ゼミの仲間たちと楽しみながら⾃分を鍛えたい、和気あいあいとしながらも真剣に学問に取り組みたいという意欲ある学⽣諸君を歓迎します。国際政治の専⾨知識は問いません。卒業する時に、「⼤学在学中に、その当時の最先端をいく国際政治のテーマについて学び、同世代の誰にも負けないほど調べて考えて議論した」と⾃負できるようになりたいと思う⼈に応募してもらいたいと思います。
毎週のゼミでは、国際政治の最新の動向に関する論⽂・論考を取り上げ(英語⽂献あり)、その内容について議論を重ねます。
春学期中のゼミでは、はじめにレジュメとパワーポイントに基づいたプレゼンテーションを⾏い、次週までの課題について検討し、翌週のゼミの前半に、前の週に定めた課題について議論して総括するというサイクルを繰り返して、⼒を⾝につけていきます。発表を踏まえて⾃分たちで何を問うべきか検討し、翌週までの課題(問い)を⾃分たちで⽴て、1 週間かけてじっくり考えてそれをまとめ、翌週のゼミで考えを持ち寄って議論してもらうという⽅式です。
並⾏して、チーム別に担当テーマについてケーススタディの調査を実施してもらい、調査結果をまとめ、夏合宿で発表してもらいます。(ゼミで講読する⽂献は、ケーススタディに関連するものとします。)
秋学期には、2 つの班が共通のテーマに関して調査・分析を⾏って、コンペ(競争)⽅式でプレゼンテーションを⾏います。他のゼミ⽣や教員は発表班に質問を浴びせ、議論を通じて重要な問いや課題について深掘りしていきます。また、学期末に提出する短い共通課題のゼミペーパーを執筆する作業を通じて⽂献調査や論⽂の書き⽅などの基本的な作法を⾝に付けてもらいます。4 年⽣になった際には、⾃分で⾃由に選ぶ現代国際政治に関するテーマについて、年度末までに研究論⽂を執筆しますので、あらゆるテーマに⾃由に取り組むことが出来ます。
年間⾏事としては、OBOG 会(森先⽣の前任校でのゼミの OBOG が 12 期⽣まで参加しますので就活相談や OBOG 訪問なども可能です)、夏合宿、他⼤学との合同ゼミ、官庁への訪問、有志学⽣による海外⾃主調査旅⾏などを予定しています。合同ゼミでは、外交シミュレーションを実施して、⽇頃から鍛錬した⼒を実践・発揮する場も⽤意します。2024 年 6 ⽉末には、九州⼤学の⽇本政治外交史ゼミと合同で、班毎に分かれてアメリカ次期政権の外交シナリオを作成し、コンペ⽅式で発表しました。
夏合宿、合同ゼミ、海外自主研修旅行について
森聡研究会では普段のゼミ活動以外にも、実践的な学びを得られる機会がたくさんあります。一例として、2024年度の実践的活動をご紹介します。
6月には、九州大学の中島ゼミと合同ゼミを行いました。合同ゼミでは、「もし仮にアメリカで第二次トランプ政権が誕生したら、日本の安全保障にいかなる影響が及ぶと考えられるか」というテーマで、慶應生と九大生の混合の班に別れてシナリオを考えました。その後全体で発表し、先生方から講評をいただきました。様々な地域でのシナリオを総合的に考慮した班や反対に地域を絞った班、楽観的・現実的・悲観的に分けてシナリオを考えた班など班毎にどのようにシミュレーションするかが異なり、非常に興味深かったとともに、新たな観点を得ることができました。
8月には、栃木県の佐野で2泊3日のゼミ合宿を行いました。トランプ政権、ハリス政権を仮定した外交シミュレーションをはじめ、ディプロマシーゲームという外交をテーマにしたボードゲームをゼミ生一同でプレーしたり、BBQなどを楽しむなどして親睦を深めました。
10月には、以前外務省で外交官としてご活躍されていた森先生のご紹介で外務省を訪問しました。北米局日米安全保障条約課の網谷耕介課長より、日米防衛協力の現状についてお話を伺いました。外務省にご出向中の自衛隊の方からも、自衛隊と米軍との協力の現場についてお話を伺うことができました。その後、ゼミ生による多数の質問にご丁寧にお答えいただき、活発な質疑応答が行われました。
このように、森ゼミでは国際政治の最前線でご活躍されている方のお話を直接聞けたり、議論ができたりするなど、実践的な学びを深めることができます。
森聡研究会ではゼミ生と相談した上で、夏合宿、他大学との合同ゼミ、海外自主旅行研修を予定しています。森先生が法政大学でご担当されていたゼミでも合宿などを行っていました。